日本秘湯を守る会

秘湯をさがして
 
田舎を捨てた人間だけに人一倍田舎を恋しがる東京人の一人である。
幼い頃に、いろりのそばで母のぞうり作りを見、縄をなう父に育てられたからかも知れない。
しかし、そのふるさとの家も跡かたもなく近代化され、牛小屋はコンクリート建ての車庫に変わってしまった。
おいやめいが各々の車を持って走り回っているほどの近代化した日本の社会である。
いったい、老いゆく自分達がどこに安住の地を求め、どこに心の支えをおいたらいいのだろうかと
迷いながらさまよい歩いて三十年の歳月が流れていった。
 旅行会社に席を置くために、つい旅行に出たり、旅と結びつけてしまうが、
もうホテルもきらきらした旅館もたくさんだ、炭焼き小屋にでも泊めてもらって、
キコリのおじさんとにぎりめしでもほうばってみたいと思うこともしばしば。
 馬鹿らしくて夜行列車なんか乗れませんよ。ジェット機が早くて楽で…。
といったかと思うと、やっばり連絡船はよかったなあ…、人間の哀感を知っていた乗物だ。
自分たちが必死で求めてきた近代文明に何かが欠けていることがようやく解ってきた昨今の日本の姿であろうか。
 それはたしか昭和四十四、五年頃だったと思う。せめて自分だけでもいい。
どんな山の中でもいい、静かになれるところで自分に人間を問いつめてみたいと思って
杖をひいたのが奥鬼怒の渓谷の温泉宿だった。
ランプの明かりを頼りにいろり端で主人と語りあかしたあの日が今でも忘れられない。
目あきが目の見えない人に道を教えられたような思い出がよみがえってくる。
公害のない蓮華温泉の星空はきれいだった。
人間と宇宙がこれ以上近づいてはならない限界のようにさえ思われたのである。
細々と山小屋を守る老夫婦の姿には頭が下がった。
人間としてのせいいっぱいのがんばりと生き甲斐が山の宿に光っていた。
 ひとびとの旅は永遠に続いてゆく。それぞれ目的の異なる旅かも知れないが…。
いづれの日か山の自然と出で湯は、ほのぼのとした人間らしさをよみがえらせてくれることだろう。
秘湯で歴史を守ろうとじっとたえてきた人々の心の尊さがわかって頂ける時代が帰って来たのである。
秘潟を守る皆さんや、秘潟を訪ねられるお客さん方に、
私たちが近代社会の中で失いかけていたものは…という問いを投げかけてみたい。
これからの日本に大切なことは何か。
それは、人間が共に考えながら、助け合いながら、築き上げ、守りぬく、
ぬくもりのある人生の旅ではありますまいか。 ・・・ 岩木一二三

(昭和56年発行第六版の序文より)
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